第22章 君が大好きな俺へ 氷鷹北斗
驚きのあまり、声が出なかった。少し、胸が痛い。
あんずが言うには、付き合ってたつもりは彼女自身にはなかったが…部長はそのつもりだったらしい。どうして二人の間でそんなすれ違いが起こったのか、彼女もよくわかっていないようだ。
しかし、一つだけ分かるのは………
あんずは、きっと部長のことが好きだったのだろう。部長の一言で、一週間も仮病を使って休むことなのだから。
「…大好きだったッ…!!」
彼女がはき出した言葉は、切実な………叶わぬ願い。
「…話してくれて、ありがとう」
俺は彼女の涙を拭おうとして…やめた。きっと、彼女はそれを望まないだろう。
泣きやんでから、彼女は小さく…ありがとう、と言った。何に対する感謝なのかはよく分からなかった。
「…授業、ごめんね。」
今度は謝られた。確かに、昼休みはとっくに終わっていた。
「かまわない。あんずは授業に戻ってくれ。俺は反省文を書き直す。」
「今から?」
「出来が不満なんだ。」
氷鷹くんらしいね、とあんずが笑って去っていく。
元気になったようで、何より。
さて………
「そろそろ出てきたらどうだ?」
「amazing!バレてましたか?」
部長が天井から降りてきた。どうやら天井裏に細工をしていたらしい。
しかし、そんなところから現れるとは思わなかった。
「………まぁ…情けないことを知られてしまいましたかね?」
「驚いたが、情けないとは思わん。」
「すみませんね、どうも気になって覗き見してしまいました。
でも………本当に、あの子が好きなのですよ。私はね。」
あんずは好きだった、と言っていたが部長は今でも好きだと言う…。
「しかし、終わった恋に未来はありません!私は他の人を探すとしましょう!では、北斗くん……?」
部長はどこから出したのか一輪のバラをわたしてきた。
「私の願いは託しました。彼女はきっと屋上にいますよ!さぁ、今すぐ行きなさい!」
「…………は?」
何を言ってるのだ、この人は。
しかし有無を言わさず俺の手にバラを握らせる。
「私の思いです。最後の最後まで届かなかった、私の。」
部長は悲しげにそう言って、俺の背中を押した。