第22章 君が大好きな俺へ 氷鷹北斗
あんずが、学院に来てくれた。
きっと勇気を出してくれたのだろう。感謝せねば。
しかし、授業中ずっとソワソワしているし…落ち着かないようだ。
4限終了のチャイムが鳴ると、あんずは一番に立ち上がった。
その顔を見て……
話をつけに行くんだろう、とわかった。
俺は何だか不安になって………あんずについて行ってしまった。
「やあ、あんずちゃん。久しぶりだね。しばらくカゼをひいていたみたいだけど、大丈夫?」
「…………日々樹さんは」
「渉かい?どうやら、君が休んでいる間にすっかり興味をなくしたらしくてね。演劇部の勧誘はもうないよ。」
生徒会室の扉に耳をあてて、盗み聞き中である。まわりに誰もいないのが幸いだった。
とりあえず変態仮面がいないことに…………本当に、安心した。
「それで、返事は?」
「お断りします」
「…………そうか」
しばらく、何一つ声が聞こえなくなった。
その静寂を破ったのは、生徒会長で………
「理由は?」
「……………私には…trickstarの皆がいるから」
彼女の声は震えていた……が、そう言ってくれたことが何よりも…何よりも嬉しかった。
「皆が私をどう思ってるとかはわかりません、でも……私は皆が大好きだから。」
「全く…………彼らが羨ましいね。あぁ、ところであんずちゃん。」
ガタッと中から音がした。…イスから立ち上がった音だろうか?
少し、足音がして止まった。
「_____」
小声で何か言っているが、全く聞こえない。
「キャッ!?」
と思えば、あんずの短い悲鳴。
「う、ウソ!!しっかり、しっかりして!!ど、どうしよう…………!!お、おお起きて!起きてくださいっ!!!」
何だか困ったことになったようだ。
俺は盗み聞きしていることがバレるかもしれないことも忘れて慌てて扉を開けた。