第22章 君が大好きな俺へ 氷鷹北斗
弟に言われるがまま部屋に入る。あんずはベッドで丸まっていた。
俺達の存在に気づいたのか、ひょっこり顔を出した。
「…………な、……………ん……で…」
顔が青ざめた彼女はこの世の終わりを目の当たりにしたようだった。
「あんず、悩んでることがあるなら俺たちに言ってくれ。」
「無理です」
まさかの即答だった。相変わらず青ざめた顔で…布団から顔だけ出して、彼女はそう言った。
「何で!?何でなの!?俺たち友達じゃんっ!!!あんずの裏切り者!!」
明星があんずを布団から引っ張り出した。彼女はバランスを崩して床にベチャッと倒れ込んでしまった。
「おいスバルやめろ!!……ほら、立てるか?」
衣更が差し出した手を、あんずはつかまなかった。そのままフラフラと姿勢を正し、土下座の体制になった。
「ごめんなさい」
「は?ちょ、や、やめろよ!俺じゃあるまいし!」
「本当にどうしちゃったのあんずちゃん!?」
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい……」
ひたすら謝り続ける彼女に衣更と遊木が慌てふためく。俺と明星も顔に出ていないだけで、内心穏やかではない。
「もしかして、学院に来ないのって俺たちが原因?」
「…………私からは、何とも…」
その解答に、俺たちは黙り込んだ。
…見ず知らずのうちに、彼女を傷つけていたのだろうか?
彼女はようやく土下座をやめて、顔を上げた。
「……ごめんなさい」
「いやいや、謝る意味がわかんないよ。俺たちに原因があるなら謝るのは俺たちだろ?」
「あぁ………そうなの?」
「何でお前が聞くんだよ…」
「……私だってわかんないんだもん…」
あんずは困った顔をして、俺たちのことを見ようとはしない。
……いったい、どうしたというのか?