第21章 大正歌劇に迷い込む 守沢千秋
私達の真上から、光が降ってくる。
守沢さんに下ろしてもらい、光を見上げた。
「……あんず、そろそろ教えてくれ。いったいどうしたんだ?」
「……私」
もう全てを話そうとしたとき………
光の落下が加速した。ゆっくり落ちてきていたはずなのに……ゴォォォッ!!と轟音を立てながら光は私目がけて落ちてきた。
「あんず!!!」
守沢さんが手を伸ばすも、光は私に直撃した。
痛い、とかではなく………優しく、フワフワした感覚になり、……まばゆいばかりの光に包まれた。
「ごめんなさい、守沢さん!!!」
手を伸ばしたまま固まっている彼に、声の限り叫んだ。相変わらず轟音が鳴り響いているので、彼に届いているかはわからない。
「私!あなたの知ってるあんずじゃないのっ!!!」
光が濃くなって彼の顔が見えなくなる。それでも私は手を伸ばした。
「未来でまた!!会いましょう!!!」
その守沢さんは目の前にいる守沢さんではないのだけれど………
目の前にいる守沢さんとのお別れも、寂しいものだった。
お互いに精一杯伸ばした手が、一瞬重なった。
その瞬間、私の意識は一瞬途絶えた。
そう、一瞬。
「で、あるからして___」
いつもの教室。いつもの授業。いつもの見知った学友達。
「___?」
あれ?私、ちゃんと夢ノ咲の制服着てる__?
ノートは…全く見覚えのない、糸のような達筆な字で書かれていた。まるで、今の今まで別の誰かが板書を書いていたような。
「では次、あんずさんお願いします。」
「……え!?すみません聞いてませんでした!」
と言った瞬間教室内が笑いの渦になった。
「おや、今日はまともなお返事が返ってきたなぁ。ここ最近、そんなことよりお仕事が……とかなんとか言ってたんですけどね!」
と笑い飛ばす先生。
私は全く笑えず、当てられた問題を解いた。
_____そうか
私、ちゃんと帰ってきたんだ。