第21章 大正歌劇に迷い込む 守沢千秋
「あんず殿!あの時と同じである!!」
そんなことをしていると神崎くんが勢いよく入ってきて、部屋の窓の外を指さした。
「………来た」
真っ黒な夜空に線を引いたように光がゆっくりと降ってきている。
確信できる。これがあの子の言ってた流れ星だ。
「行かなきゃ」
「……?あ、あんず殿!?どこに行くのであるかッ!?」
いつの間にか、私は走り出していた。
わからないけど、本能が言っている。
走れ。光が落ちるところまで、と……
「待たれよ!あんず殿!!」
神崎くんを無視して、警察署から飛びだす。
仕事から帰ってきた守沢さんと南雲くんがものすごい勢いで走ってる私を見て驚いていたが、構っている暇はない。
草履も履かずに走る。足が痛い。
目的地もないのに、ただただ走る。もしかしたら、神崎くんが連れて行ってくれたあの場所かもしれない。
「…キャッ!」
小石か何かに躓いてすっ転んだ。というかゴロゴロ転がって最終的にはピッタリ動けなくなった。
それでも走れと体が言ってくる。
「あんず!!」
そこに、走ってきたのが守沢さん。彼は肩で息をしていた。どうやら追いかけてくれていたらしい。
「すまん!神崎に仕事を変わってもらってな!どうしても、追いかけてこいと!!」
「……………守沢さん…………お願いが…………あり…ま…す」
私の体ではもう走れない。それくらいずっとはしっていたのだと思い知らされた。
「私を、光の落ちるるところまで………連れて行ってください!」
「………………わかった。よく分からないが、どうしてもそこに行きたいんだな!!」
彼はそう言って私を背中に背負って、光の落ちる場所へと走ってくれた。