第21章 大正歌劇に迷い込む 守沢千秋
「………ここが、光の降ってきた場所?」
「うむ」
地面がクレーターのようにへこんでいる。しかし、へこんでいるだけで特には何もなかった。
「………やっぱし駄目か」
ここに来たところで何かが変わるはずはないのに、何を期待していたのだろうか。
「あんず殿、守沢殿が来られた!ほら、あそこに!」
制服をビシッと着た守沢さんが、走ってくるのが見えた。彼は満面の笑みで話しかけてきた。
「おはよう!どうして2人はここに?」
「聞いて驚かれよ!あんず殿が先日の光が降ってきた時の記憶を取り戻したのだ!」
「それは本当か!?」
「い、今のところそれだけです…」
しかし、守沢さんはやったやったと大はしゃぎ。
やはり何だか心が痛い。早く帰りたいなぁ………!
「と、いうわけでごめん!」
「いえ……私も、元に戻る方法を探してみます。」
「うんうん、気持ちはわかるけどここは少し………ってえぇ!?元に戻る気になったの!?」
「だって、ここにも千秋様はおられるから。私の知る、あの人ではないけれど……。」
夢の中でもう一人の私にまた会えた。
今度は良い返事が聞けて、嬉しかった。
「そういえばさ……私も消えちゃいたいって思ったことあるんだよね!プロデュースで大失敗したときとかさ……。
でも、消えたりしないでしっかり面と向かって向き合うのが良いも思うよ!」
「……そうですね。私は、勝手に千秋様の幸せを決めつけて…勝手に消えてしまった。謝らなければなりませんね?千秋様にも……あなたにも。」
「良いって良いって!時代は違えど私達、同じあんずだしね!無礼講ってやつだよ!」
彼女はそれを聞いて、満面の笑みでありがとうと言ってくれた。
それを見届けてから、私は目が覚めた。