第21章 大正歌劇に迷い込む 守沢千秋
夢の中で御飯を食べ、風呂に入り、そして今眠ろうとしている。
全く夢から覚める気配がない。
部屋の布団上で色々と考えたが、結論など出るわけもなく。今は何となく部屋を漁っている。
机の引き出しを全部開けてみたが………何一つ入っていない。
部屋の角にあったタンスを開けると、1段目に着物、2段目は空で……というか、1段目以外空っぽだった。
本当に生活感のない部屋だ。
しかし1段目に入っていた着物が綺麗だったので、一つ一つ丁寧に取り出していると………
「………本?」
分厚い本だった。この時代に本って珍しかったりするんじゃなかったか?
歴史の苦手な私はあれこれ考えるのをやめて本を開いた。
どうやら日記のようで、ごくごく平凡な………洗濯物が多かったとか、御飯を炊きすぎたとか…
そんなことが糸みたいな字で墨で書かれていた。
時折読めない漢字もあったが、まぁ大体そんな内容だと思う。
日記は本の真ん中ほどで終わっていた。
最後のページには
「…き…………え…………た……い…………ほし……ねが……?」
きえたいほしねが?
駄目だ、読めない。頑張れ私……!
「ほしねが……ほしねが……ん?ほし……に?ほしにねが………?きえたいほしにねが……」
星に何か願ったのだろうか。だとしたら消えたい、だろう。最後のページで私が読めた文字はそれだけだった。