第3章 深海奏汰
奏汰先輩の誕生日パーティーを明日に控えた今日。全員が泊まり込みで準備していた。
アイドル活動だと生徒会に言い張り何とか泊まることを許可してくれた。なので飾り付けをしながら歌を歌ったり掃除しながらダンスしたり…カモフラージュをしながらだったのでかなり時間がかかった。
「あのー…私は泊まることを許可されてないんです。男の子の中に女の子一人は駄目だって、最後まで猛反対されて……。」
「おぉ、そうなのか!高峯!送ってやれ!」
「いえ、大丈夫です!一人で帰れますので!」
「…でも真っ暗ですよ?」
好意はありがたかったが疲れているだろうし申し訳なかったので一人で帰ることにした。
帰り道で明日は上手くいくだろうかとワクワクしていた。
家はすぐ近くなので、危なくもない。そう思っていた。
あと少しで帰れる、というところで腕を捕まれた。
「……?」
そこにいたのは見知らぬ人で、何かしてしまったのかのだろうかと呑気なことを考えていたが次の瞬間には路地裏に引きずり込まれていた。
「んんっ!!」
いきなり口を抑えられ声が出せない。突然の出来事に頭がついていかなかった。
「みはるっ!」
でも、すぐに解放された。私を守ろうと私に背中を向けているのは…
「奏汰先輩…?」
見知らぬ人は奏汰先輩を見てすぐに走り去っていった。
それを見届けた奏汰先輩はクルッと振り向いた。
「がっこうにおさかなのオモチャを取りに行ってたんです。丁度良いタイミングでしたね。怖かったでしょうよし、よし。」
先輩の優しさにホッとした。やっぱり翠に送ってもらえば良かったかもしれない。
「ふふ、みはるが僕のせーたーを着てますね。何だか嬉しいです。それでみはるだってわかったんです。」
「そうなんですか~。ありがとうございます~。」
私達はニッコリ笑い合って一緒に帰った