第20章 鬼ごっこ 逆先夏目
「全ク……ハァ、ハァ………手のかかるッ…!」
「ちゃんとあんずさんをつかまえられたんですね~。あんずさん、すっごくあしはやいのに~。」
噂に聞いていたがこれほどの俊足の持ち主とは知らなかった。
犯人は捉えられた直後に奏汰のちょっぷをお見舞いされ、すっかりのびてしまったようで零にズルズルと引きずられていた。
夏目は息を整え、あんずになるべく優しく叱りつけた。
「駄目じゃないカ、こんなことしたラ。これならまぁいっか~ってなるほうがまだマシだヨ。」
「……………ごめん。夏目が怒ると思って。」
「僕?怒らないヨ?」
夏目がそう言うとあんずが黙り込んでしまった。
「…まぁ良いかと言ってしまうことに怒られてばかりだから今回はまぁ良いかと言わずに自分で何とかしようと思ったのではないのか?」
見かねた宗があんずに優しく問うた。彼女は黙って頷いた。
「………それハ………怒ってばかりの僕も悪かったけド……全部自分でやろうとしないデ、ちょっとくらいは頼っ……………!?」
そこまで言いかけた夏目が地面に倒れ込んだ。横腹を抑えてうめき声を上げている。
どうやら時間がたって復活した犯人が夏目の横腹を蹴ったらしい。
犯人を捕まえていた零は掴んでいた腕をやられたらしく、痛そうに抑えていた。
「な、夏目!!零も、腕ッ!!」
あんずが慌てて2人に駆け寄った。
「………少しやり過ぎではないのか。僕達は学生とはいえ、アイドルなのだぞ…?」
「んなこと知るか!!!」
次は静かにいさめる宗に殴りかかろうとする。
しかし、宗が痛みを感じることはなかった。
彼の変わりにあんずが拳を手で受けていた。
「なっ……はなせ!!」
ギリギリとあんずが犯人の拳を受け止めた手に力を入れていく。
「バカッ!!!」
パンッ!と綺麗に音が響いた。あんずが犯人の頰をひっぱたいたのだ。