第20章 鬼ごっこ 逆先夏目
(夏目のバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカッ!!!)
いつもより大股で、泣きながらあんずは下駄箱へと向かっていた。
鞄は夏目にぶん投げたためないのだが、それに気がつかないくらい彼女は今怒っていた。
怒ると泣いてしまうのは、彼女の癖であった。色々とイライラして…………最終的には虚しく、悲しくなってしまうのだ。
走行している間に、彼女はいつもの不思議な気配に気付いた。
あんずは気配のする方に向かって怒鳴りつけた。
「あんたも夏目と同じッ!!!イライラするわ!!ついてこないでっ!!!!」
しかし、気配は消えない。
(…こうなったら私から正体を暴いてやるわ……このまま、まぁいっか~って言わなかったら…夏目も怒らない………よね?)
彼女はそう決心して、下駄箱で上靴から下靴に履き替えた。
「あんズ!!」
夏目が校舎内を探し回るも、どこにもいない。まさか帰ったのかと考えたが、いくらなんでも鞄がないことに気付くだろう。
しかし彼女ならそれに気づかないこともあり得る。下駄箱で下靴があるかを確かめたら………ない。
本当に帰ったのかと思った。ストーカー被害にあうのは学校内限定のようだし、夏目としてはそれが一番良かったのだが………
昇降口の床に、外から舞い込んできた砂が一面にたまっていた。……その砂に、女の子らしい小さな足跡と…………明らかに男のものの足跡がかすかに残っていた。
それらは同じ方向に進んでいた。
(…………この足跡の方向は校門じゃなイ…?)
きっとあんずはまだ学院の中にいる。しかし、校舎内ではない。
夏目には、彼女がどこに行ったのか皆目見当がつかなかった。