第19章 思わず目を見開いた、あなたの正体 瀬名泉
「ちょ、司くんストップ!!本気で耳がっ……!」
………そういえば、さっき帽子屋さんが言ってたやつ………
よし、試してみよう!!!
大きくなりますように大きくなりますように!司くんみたいに大きくなりますようにっ!!!!
すると私の体はぐんぐんと大きくなり、天井にゴチッと頭を打ち付けた。
大きくなってよくわかる。お菓子だけでなく、この二階自体すごく大きい。
「あたた……司くんより大きくなっちゃった。何かショック…」
「司くん…?それは誰ですか?私は女王の息子………!princeです!」
「えぇ!?司くん王子様なの!?」
しかし…………まぁ、マカロンやらスコーンやらを両手に抱えてキッと私を睨みつけてくる司くんもとい王子様は…
とっても可愛い。今は私の方が大きいからなおさら。
「可愛いわ~!こんな弟欲しいっ!ほら、いつもみたいにお姉様って言って!?」
「な、何をするんです~!?私のお菓子は何一つあげませんよ!?」
思わずギュウギュウと抱きついてしまう。こんなことしたら泉先輩が黙ったもんじゃないが、彼は今帽子屋さんだ。
「お菓子はいらないっ!弟にちょーだいっ!!」
「意味が分かりません!お母様がいらっしゃる屋上はあの階段をのぼったところにあるdoorから行けます!早くどこかへ行ってくださいっ!」
と、冷たいことを言われたのはショックだがしょうがない。
帽子屋さんを手の上にのせて司くん……王子様が言っていた階段をのぼる。
「いてっ……大きくなりすぎて天井にあたる~っ!!」
「………馬鹿じゃないの~?」
…あれ?帽子屋さんなんか怒ってる?
「……どうかしました?」
「べっつにぃ。ちょ~うざいんですけどー。」
そう言ってはいるが、王子様がタイプなのか、あんなののどこが……とかネチネチ聞こえてきたから、やっぱり帽子屋さんでも泉先輩は泉先輩だった。