第18章 ガラクタドールガール 斎宮宗
「お騒がせしました………」
誠心誠意心を込めて深々とお辞儀をした。
「だから、そういうときは…」
「ありがとう、ですね。」
「うるさいよ、fineの小童が…」
また同じことを言われてしまった。きっとあの子達はもう来ないだろう。
本当に、感謝してもしきれない。
上靴を隠されたり、ノートに落書きされたり、無視されたり…………
あの日々は、もう忘れよう。
………完全にとはいかないけど、私の心の奥底には力強く根付いているけど。
それでも大丈夫な気がした。
「ありがとうございました」
営業スマイルではない、本当の笑顔で。
「やれやれ、やっと笑ったね。」
「えっ!?」
「本当だ~!あんずの本気の笑顔久しぶり~っ!」
「もう一回笑ってください、写真を撮ってお嬢様にお見せしましょうね…」
「ちょ!やっ!やめて下さい!何で弓弦くん半泣きなのよ~っ!!」
「あんずのあんな笑顔を見られる日がまた来ようとは…思わなかったものですから。」
目尻にたまった涙をソッと拭う弓弦くん。
あぁ、そんなに心配してくれていたのか。
坊ちゃまも弓弦くんにつられたのか少し目が潤んでいる。
「さ、さて!一件落着したし、部活にかーえろっ!!」
「そうですね、坊ちゃま。」
「あー、あとあんずっ!!今日は僕と弓弦を待ってなくても良いからなっ!ていうかもう……学院では、自由にしてろっ!!!」
坊ちゃまなりの優しい気遣いだろう。今度は私が泣きそうになった。
「かしこまりました、坊ちゃま。
…………あと、…ありがとう。お兄ちゃん。」
小さい頃はそう呼んでいたが、大きくなって照れくさくて弓弦くんに変えたが………今日は弓弦くんの兄としての一面をたくさん見てしまったから。
坊ちゃまと弓弦くんが部活に戻り、斎宮さんと私は帰ることにした。