第18章 ガラクタドールガール 斎宮宗
「…本当にいじめられていたことを何も話していなかったのだね。僕が言えたことではないが………優しさを間違えてはいけないよ。」
「今回のことで身に染みました…。でも私、いじめられていても………最初は気にならなかったんです。姫宮の家のこと以外どうでも良いって本気で思っていましたもの。」
「………………おかしな小娘だね。」
帰り道に和気あいあい…ではないが、2人で静かに話しながら歩いた。
「………忘れていたんです。私もちゃんとした人間なのに…産まれてこの方、何不自由なく姫宮家の方々にお世話になっていましたし………泣いたこと、なくて…
高校に入って初めて泣きました。もう本当に、どうしようもないくらい。
自分を人形かなんかと勘違いしてたんです。私には人間として足りないものが多すぎた……。
あの子達とだって、好きな人のことについて話し合ったり……恋愛小説にキャーキャー言ったり、出来たはずでしたのに…。」
今となっては、あの子達とも仲良くしたかったと思う。もう二度と会う気はしないのだけれど、ちゃんとお話をしたい。
「まるで壊れた人形だね。でもまぁ………
僕はそんな君の方が良いような気がするよ。」
「…………そう、思ってくれますか…?」
「うむ。それに君は…………」
斎宮さんがククク、と不気味に笑った。
「まさか、夢ノ咲の帝王のこの僕がこんな小娘を見初めるとは。」
「そんな、見初めるなんて………………見初める?」
あれ、どういう意味だったかな…?
斎宮さんは不敵に笑って、
「家で辞書をひきたまえ。まぁ、僕の気持ちは伝えたよ。出会ったばかりの君に言うことではないと思うけどね。」
そんな話をしている間に、姫宮宅に着いてしまった。斎宮さんに送ってくれたことにお礼を言い、自分の部屋に行き辞書をめくった。
それにしても、やっていけないと思っていた夢ノ咲での高校生活がとても楽しみになってきた。
早く明日にならないかな。
見初める
一目見て恋心を抱く