第18章 ガラクタドールガール 斎宮宗
アイドルには、ファンがいて…男性アイドルなら、女性ファンがほとんど。
前の学校の子達もそう。アイドルが好きで、ファンで…………。
分かっていた。分かっていたのに、こういった事態を予測できなかった。
生徒会の仕事を終えて、帰ろうとしたとき……。衣更くんと弓弦くんは副会長に呼び出しされていたので、一緒にはいなかった。
先に校門に行ってて下さい。
弓弦くんの言葉通り、そうしていた………。それを、私は後悔している。それもすごく。
「うっわ、伏見じゃん。」
嫌になるほど聞いた声に、心臓が飛び跳ねる。
「え、何?何で夢ノ咲から出て来てんの?しかもそれ、夢ノ咲のアイドル科の制服じゃん。最近噂になってたプロデュース科の制服って伏見だったの?」
「うっわー、転校してくれて嬉しかったのに…。何でアイドルなんかに興味のない伏見が夢ノ咲にいんのー?めっちゃムカつくんですけど。」
この子達にまで、噂の転校生は伝わっていたのか……。
前の学校で、私をいじめていた子達。
女執事の私は、普通が分からなかった。放課後一緒に買い食いしたり、好きなアイドルにキャーキャー言ったり、恋愛小説で盛り上がったり……。
それが分からなかった。
「うちらアイドル科の子を出待ちしてんの。早く帰ってくんない?」
「………ま、待ち合わせをしておりますので…」
「はぁ!?何、一緒に帰るの?何それ超ムカつくんですけど。」
「それにその喋り方気持ち悪いんだよ!」
……あぁ、悪い意味で懐かしい。そうだ、前の学校はこんな日々だった。
「あー腹立つ。つかさ、あんた金貸してよ。アイドルのファンって金いんのよ、金が。お金持ちの使用人さんなんでしょ?給料たくさんもらってるんじゃないのー?」
「………持っていません」
「はぁ?いいからよこせ!」
無理やり肩にかけていたショルダーバッグを引っ張られた。
………あんず、これあげる。
まぁお嬢様、これは…
教科書を入れる鞄、持ってないでしょ?パパに買ってもらったの。あげるね。
……………ありがとうございます、お嬢様。
このショルダーバッグは、お嬢様から初めてもらったプレゼント。何よりも大切なもの!