第18章 ガラクタドールガール 斎宮宗
「………」
「…やはり、慣れませんか?」
「うん」
放課後、転校して初めての日直の仕事をした。それは前の学校でやったこととだいたい同じ。
弓弦くんは隣のクラスなのだが、せかせかと頼んでもいないのに手伝ってくれている。
「分からないわ。どうして旦那様は私をこの学院に…」
「旦那様ではありませんよ。お嬢様です。」
「え!?旦那様の命令じゃなかったの!?」
てっきりそうだと思い込んでいた。お嬢様が、どうして……?
「気づいていたんですよ、皆…。あんずが学校を嫌っているということは。一番気にかけていたのはお嬢様です。小さいながらも、一番側であんずの悲しみと触れていたんですから。」
弓弦くんに言われて、初めて気づいた。思えばお嬢様は、私に「大丈夫?」と聞いてくださっていた。
「………私、使用人失格だわ。」
「そんなことありませんよ。少し過小評価しすぎです。」
弓弦くんは微笑んでそう言ってくれる。
………皆、気づいていたのかな。
私のこと……。
「お、伏見兄妹揃ってんじゃん!!」
どこかしんみりした空気を破ってくれたのは………隣のクラスの、衣更真緒くん。
「姫宮の奴がまた逃げてさ…。部外者に頼むのも不本意なんだけど、いつもみたいにまた手伝ってくれ!弓弦!」
「はい、承知しました。…………あんずも、やりますか?」
「手伝ってくれるなら大歓迎だぜ!」
突然そう言われて、二つ返事で了承してしまった。
生徒会の仕事なんてできるだろうか………。
しかしいざやってみると何とかなるものだ。ただ山のような紙の記入漏れがないかをチェックするだけ、だった。
「しかしまぁ、こうやって揃ったら似てるなぁ…。」
「双子ですので。」
「どっちが上?」
「私でございます」
私は弓弦くんの隣で縮こまって仕事をしてるだけで、衣更くんとは全く話さなかった。
………きっとこういうところが駄目なんだろうなぁ。