第16章 騎士たるもの 月永レオ
「その後兄さんの人気は落ちて、ついには学校をやめたんだ……。俺はあの時のことが許せない。兄さんを馬鹿にした夢ノ咲の奴らが………許せない。
…………………?」
それまで怒りで震えていた手鞠野さんが突然キョトンとした顔になった。
「_____何で、君が泣く?」
そう言われて気付いた。あぁ、私、泣いてるんだ…。
「す、すみません…!」
慌てて拭う。それでも止まらないものだから手鞠野さんがワタワタしだした。
「おぉい、頼む泣き止め!」
「ごめんなさいっ………!」
止めようとすれば止まらない
……本当に、本当に…………手鞠野さんが兄さんを思う気持ちが伝わってきたのだ。
「…………何やってるんだ!!」
そんな時に、レオの怒鳴り声が聞こえた。レオはいつの間にかステージ裏に来ていたようだった。大股で走ってきてギュッと私を抱きしめて手鞠野さんを睨みつける。
「あんずを泣かせるな!」
「ち、違う!違うのレオ!!!」
レオにしがみついて説得するが、聞く耳を持たない。
「こないだあんずが泣いてたのもお前のせいだなっ!!絶対許さないぞ!!!」
「…………あの時の壁ドンは謝るけど…今回は俺のせいじゃないと思うよ?」
「壁ドン!?壁ドンってなんだ!!」
………あぁ、あの壁に押されたときのか。確かに壁ドンっぽかった。
「………はーぁ、何でこんな話したかな…俺。でもまぁ、泣いてくれて嬉しかったよ。夢ノ咲にも良い奴はたくさんいるね。君とかKnightsの奴らとか、さ。」
手鞠野さんは立ち上がってそう言った。
「…………ありがとう」
それだけ言って去っていく。彼の背中には、高校で3年間生き残ってきたという貫禄があった。
そして………その背中に抱えていた恨みや憎しみは、消えることはなくても………少しは軽く、なったのだろうか。
「……あんず?」
「…私、泣いてばかりだね」
止まりかけていた涙が、再び流れ出した。