第16章 騎士たるもの 月永レオ
レッスンが終わって皆が帰った後、私は衣装作りをして………レオは作曲をしていた。
ガリガリと書き殴っているけど、そのうち床や壁に書き出したりしないだろうかと気が気でない。
「書けたっ!!!あんず、帰ろう!!!」
「…………あ、そうだね。もう6時か…。ちょっとだけお腹空いたな…」
「俺はかなりペコペコ!もしかして、またお昼ご飯食べるの忘れてた!?」
「ちゃんと食べてたよ…」
ダンスやらで動いたせいだろう。裁縫道具や布を片づけて、立ち上がろうとしたが…立ち上がれない。それもそのはず、レオが私の膝を枕にして寝転んでいた。
「…帰らないの?」
「気が変わった!!!」
気まぐれすぎる…。ほとほと呆れた。
レオがウトウトする中、私は先ほどの手鞠野さんとのやりとりを思いだしていた。
レオに話せたら良いけど………喋ったらただじゃおかないとあの人は言った。
はったりかもしれないが、もしかしたら…という考えが浮かんできて言い出せそうもない。
不安でたまらないものだから、自分の膝を枕にして寝転がっているレオにギュッと抱きついた。
「んー…?あんずからのハグは珍しいな…
どうした?」
「………ッ何でもない」
明らかな涙声だった。レオはポンポンと軽く背中を叩いてくれた。
「言えないのか?」
「………うん」
レオから体を離すと、ポタポタッと涙がこぼれた。涙はレオの頰を伝って、床に落ちた。
「……泣くな」
レオが優しく涙を拭ってくれる。それでも涙は止まらない。
「………あんずは頑張り屋さんだな。」
レオは起き上がって正面から抱きしめてくれた。
レオの腕の中で、私は泣き続けた。