第16章 騎士たるもの 月永レオ
レッスンの休憩時間…。レオはインスピレーションだのなんだの叫び散らして出て行ってしまった。司くんがそれを追いかけて行くものだから、私と手鞠野さんの2人きりになってしまった。
私はせっせとドリンクやタオルの補充をして働いていた。
一段落ついたところで、手鞠野さんが声をかけてきた。
「………あのさ」
雰囲気が変わった。冷酷で、無表情な顔にスッと変わってしまった。
「今日、俺が電話してたの聞いてただろ。」
「え………」
「ハッ。誤魔化せたとでも?お前嘘下手すぎ。すぐわかったよ。」
キャラの変わりようにビックリする。それよりか……何か恐い。
「…隠すのも馬鹿らしいから言わせてもらうけど。正直俺は夢ノ咲なんか来たくなかった。ったく、太陽がどうしても_って言うからやってるけど……
本当時間の無駄。」
太陽…?聞き慣れぬ名前に首を傾げた。しかし……本当にズバズバ言ってくれる。そんなこと言われると悲しくなる。
「時間の無駄では、ないと思います…!」
「………あのなぁ」
反論した瞬間に、腕を掴まれて壁にダン!と押された。
背中に走る痛みで動けない間に、逃げられないよう壁に手が添えられていた。
「仕事に私情挟む気はない。やるからには全力でやってやる。でも
…このこと喋ったらただじゃおかないからな。」
覚えとけ、と言って離れていく手鞠野さん。私は壁をズルズルとつたってへたり込んだ。
…………………まさか、こんなことになるとは。
立ち聞きなんてするんじゃなかった。