第15章 夢見がち 鬼龍紅郎
「こんにちはー!UNDEADの衣装できましたよー!」
「おぉ嬢ちゃん。仕事が早いのう。」
軽音部の部室を開けると、零先輩が出迎えてくれた。
「いえ、私だけでは難しかったので紅郎先輩や斎宮先輩に手伝ってもらってやっとできたんです。」
実はあの乙女心について話し合った日に注文をもらっていた。あれから1週間ほどたつが……ここまで長びくとは思ってもいなかった。
あの二人が、難しいと断言するほど複雑なデザインだったのだ。
「うむ、上出来じゃ。衣装合わせをしたいが、中々全員揃わなくてのう…。それはまた今度として!
あんずの嬢ちゃんや。最近悩んでることはないかえ?」
「…え?」
零先輩が言うには、鉄虎くんと私が話し合っているところを聞いたらしい。
「彼氏に名前で読んで欲しいなどとはなんと無垢な願いじゃ。」
「馬鹿にしてます…!?私これでも悩んでるんですよ-。確かに、零先輩も私を嬢ちゃんって呼ぶけど…ちゃんとあんずの嬢ちゃんって呼んでくれますからね。」
「よほど好きなんじゃなぁ…」
孫を見るような生暖かい目で見られたが、あんずへこたれません。
「それに夢にまで見るとは……ククク」
「えぇ!?どこまで聞いてたんですか!?」
「全部じゃぞい♪」
……最悪だ。私はガクッと肩を落とした。
「…まぁ…………一役買ってやるかの。」
ボソッと零先輩が何か言った。聞こえなかったので、聞き返そうとすると…
「朔間、いるか?」
軽音部のドアの向こうから紅郎先輩の声が聞こえた。私が出ようとドアに向かうと…
「キャアッ!!!!!」
いきなり零先輩が後ろから抱きついてきた。
「嬢ちゃんっ!?」
ドアの向こうにも悲鳴は聞こえたらしい。バンッ!と勢いよくドアの開く音と共に先輩が中に入ってきた。
紅郎先輩は零先輩に後ろから抱きつかれる私を見て固まっていた。