第15章 夢見がち 鬼龍紅郎
「にしても、日に日に上手くなってるな。俺も教え甲斐があるぜ。」
「ありがとうございます。」
「斎宮にも頼み込んで勉強してんだろ。偉いじゃねぇか。」
先輩が忙しい時は、よく斎宮先輩のところへ行く。手芸部だし、こういうのは失礼だけど意外ととっても優しく教えてくれる。
「斎宮先輩、すごいですよね。パッパッとマドモアゼルお姉さんの衣装作っちゃうんです。」
「……そうか」
小さい子供を見るような目で見られたが、気にしない。小さい子供と見られているとしても、気にしない。
もう一度言おう、気にしない。
「そうだ嬢ちゃん。昨日妹と喧嘩してよ、俺に乙女心を分かれって言ってきたんだけど、乙女心ってなんだ?」
「………えぇ!?」
乙女心分かってないなぁ、とか思っていた矢先にそんなことを言われたので一瞬心を読まれたかと思ったが、そんなわけないか……と考え直した。
「人それぞれじゃないですか。ていうか、どういう喧嘩したんですか…」
「妹がお菓子作りにはまっててよ………。クッキー作っててな。何か………犬とか猫とかの形してたんだ。でもそんなこと知らねぇもんだからその形見ずに食ったら…
折角型使わないで頑張ったのに!乙女心をちょっとはわかれ!って言われたんだ」
「え、型使わないで作ったんですか!?すごいですね、妹さん…!」
あれ、もしかしたらこれを言って欲しかったんじゃないか。
「………ということを言って欲しかったのでは」
「…それで女は喜ぶのか?」
「頑張ったら褒めて欲しいんですよ。」
紅郎先輩はしばらく考えこんだ後、ポンポンと頭を軽く叩いてきた。
「いつも良くやってんな。お疲れ。」
「………あの?」
「…頑張ったら褒めて欲しいんだろ?」
確かにそうは言ったが、こんなのってありか。
嬉しい。嬉しくてどうにかなるくらい。
やっぱり、紅郎先輩ってステキだなぁ。