第14章 オオカミ彼氏 大神晃牙
「さすがに、本当に拉致なんてしないって…」
太陽さんが連れてきたのは、人気のない体育館前。ハロウィンパーティーは校舎内だったし、体育館なんて今日誰も来ていないんじゃないか。
「ごめんね、可愛い赤ずきんちゃん。転校とか、全部嘘だから。」
太陽さん以外はさっさと帰ってしまったらしい。今は私と太陽さんだけだ。
「あーでも言わなきゃまりは冷静にならないしね!気をつけなよ、赤ずきんちゃん!この夢ノ咲を恨みヤツらは星の数だけいるんだからね!
バカ英智が色々やらかしたおかげでさっ!!」
英智先輩と知り合いなのだろうか……?
「今日は悪かったね。腕掴んだりさ。」
ようやく恐怖が消えてきた。
私は声が出せそうな気がして、話してみた。
「大丈夫です、別に怪我なんてしてないし…」
「でもほら」
太陽さんは両手を掴んできた。今度は優しく。軽く袖をまくると、手首が少し赤くなっていた。
「…痛い?」
「今は全然。」
「じゃ、本当に大丈夫そうだね。」
太陽さんはニッコリ笑う。これが本当の笑顔なんだろうか。何だかホッとする。
「ごめんねぇ、まりが………あぁ、一緒にいた背の高い奴ね。アイツ、夢ノ咲のせいで色々あってね…。ほっといてもいいけど、それじゃ生徒会長の名折れなんだよね。生徒のために何かしてやりたいもんじゃん?
だから今日はさ…付き合ってやったの。やる気のない目してた奴いたでしょ?アイツも巻き込んでね。
英智には全部話してあるし大事にはならないと思うけど…君にはすまないことをしたよ。」
本当にごめん!と頭を下げてくるから、慌てて声をかけた。
「頭を上げてください、私………なんかよく分からないけど、役に立てたんですかね?それならちょっと恐かったけど…嬉しいです!」
「あぁ、そう………。優しいね。俺なら一発殴ってるよ。」
太陽さんはニヒッと笑った。