第14章 オオカミ彼氏 大神晃牙
「UNDEADか!」
「…知ってるの?」
「何でお前は知らないの…」
太陽さんは二人を見てやめたやめた、と両手を軽く挙げた。
「ハイハーイ、降参でーす。ちょっと、手前のお兄さん。お願いだからそこの猛犬手綱握っといてよ?」
「あっはは!元々首輪なんてしてないんでね。手綱なんて存在しないんだよ、困ったことにさ!!」
バチバチ、と二人の間に火花が散っている。
「お菓子持ってないから軽ーくイタズラしただけだよ、猛犬くん。ほら、行くぞまり!!!」
逃げ足の速いこと、太陽さんははるか彼方だった。まり、と呼ばれたのは私の後ろにいた背の高い人。なんだか可愛い名前だが、渾名だろうか。
「まぁ、イタズラが過ぎたかな。」
まりさんは私のずきんをかぶせた。かぶせ終わったあと、ガッと頭を抑えてきて耳打ちした。
「またね。」
「おいっ!!いい加減離れろ!!」
きっと晃牙くんには聞こえていない。
まりさんはさっさと太陽さんを追いかけて行ってしまった。
「…何だ、あいつら。」
「制服的に、夢ノ咲と姉妹校の生徒だね。ナンパとか、俺が言えた立場じゃないけど……無理やりはねぇ。」
「おい、大丈夫か。」
晃牙くんが優しく尋ねてきた。声がうまく出せなくて、黙って首を縦に振った。
「ったく、なんかかわいーとかギャースカうるさかったし来てみたら、変なヤツらに会っちまったな。」
「ま、あんずちゃん助けられてよかったじゃん?ポイント上がったんじゃな~い?」
「るせーな!!羽風…先輩!」
………あの人達が言っていたさぐりとは何だったのだろう。
それに、またね…って言ったってことは………。
なんて悶々と考えていたが、全部悪い方へと向かってしまう。マイナス思考はやめよう、と私はさっきのことを忘れることにした。