第13章 あてんしょんぷりーず? ー葵ひなたー
「あの」
屋上の手すりに腰掛けたひなたくんに声をかける。危ないですよ、と言う前に向こうから話しかけてきた。
「言っておくけど、ここにいるのは正真正銘葵ひなただよ。」
「………」
「俺たちさぁ、たまに入れ替わったりするんだよね。だから混乱したのかもしれないけど………」
ひなたくんがゆうたくんに見えて、ゆうたくんがひなたくんに見えたのはそういうことだったのか。
「…………危ないですよ」
何だかホッとして、ようやくそれが言えた。
「…俺達そっくりでしょ?誰からとは言わないけど小さいときに気持ち悪い、とか言われたんだ。」
「……それが、双子じゃないですか」
「…………まぁね。俺さ、考えたんだ。そっくりで気持ち悪いなら、片っぽがいなくなれば比べる対象がなくなって、そっくりじゃなくなるでしょ?」
ひなたくんは、何を言っているのでしょう__
何が言いたいのでしょうか?
「………あんたのイタズラ、気づいてたよ。俺って分かっててゆうたくんって呼んでたでしょ。ゆうたくんは気づいてなかったけど俺は分かったよ。
だってあんずさん、顔に全部でてるんだもん!」
ひなたくんはにっこり笑った。
「ありがとう。」
何に感謝しているのだろう?
「あんずさんのイタズラ通りになれば、葵ゆうただけになれば、誰も俺達を……ゆうたくんを、気持ち悪いだなんて言わないよね?
そうだよね……?」
ひなたくんから笑顔が消えた。
俯いてしまった彼の声は、とても弱々しい。
「___お願い
うんって言って_?」
そう言いながら彼はフラリと後ろへ傾いた。
私は危ない、と彼の手を掴んだ。
「うんなんて言いません」
グッとこちら側へ引っぱる。
ひなたくんは驚いた顔をしていた。
「そんなお願い…お断りです。」