第13章 あてんしょんぷりーず? ー葵ひなたー
「例え世界の人達があなた達を気持ち悪いって思っても、私は思いません。
だって、あなた達はとっても素敵だから……。
私は、あなた達の笑顔が…………ゆうたくんと、ひなたくんの笑顔が…大好きだから。」
ひなたくんがフッと笑う。
「何それ…………告白?」
ブワッと屋上に風が吹く。
ビックリして風が吹く方向を見ていると、力強く抱きしめられた。
「…あの、告白じゃないですけど」
「………分かってるよ。でも、俺からは告白」
「……あの?」
ひなたくんがゆっくりと私から体を離す。
「………これからもずっと好き…だから付き合って。」
「……………ぇ」
もう一回、風が吹いた。
「初めて会ったときからだよ。ゆうたくんも知らないこと。」
「ゆ……ぅた…くん…」
彼の名前を聞いたとたん、先ほどの保健室でのやり取りが頭に浮かんだ。
「………ッ!!!」
駄目だ、同じ顔…!すごく恥ずかしい…!!!
「…どうしたの?」
「………ぇと…」
墓まで持って行って、と言われたのだ。言えない。
「むぅ…何で俺の告白で赤くならないでゆうたくんの名前だけで赤くなってんのさ。
…………ムカツク」
風が吹き荒れる。髪の毛がバサバサ言ってる。
風が強くて、フラリとバランスを崩す。
ひなたくんがギュッと抱きしめて支えてくれた。
「………俺を見て。」
「…ぁの」
君の顔を見ると保健室でのやり取りが頭に浮かんでしょうがない。顔が見れない。
俯いていると、グイッと両頬をホールドされて上を向かされた。
「好き」
ひなたくんしか見えなくて、ひなたくんの声しか聞こえなくて、ひなたくんの手の温度だけ伝わってくる。
ゆうたくんの保健室でのやり取りがさぁーっと消えていく。
「好き」
行き場のない手が、ギュッと彼の制服を掴んだ。
「ひ…なた…くん」
「そう、俺。大好きだよ、あんずさん。」
風がやんだ。これなら、私の声も届く。
「…ありがとう、ひなたくん。そ、それで………よろしく、お願い…します……………」
だんだん小さくなった声。でも、至近距離のひなたくんには聞こえたようだ。
彼はにっこりと笑った。