第11章 今日こそは私とデートしてください ー羽風薫ー
「………」
敬人先輩に叱られた後、私は図書室へ立ち寄っていた。
黙々と目的の本を探して、やっと、見つけたのに。いじめかっちゅーくらい高いところにあって、かれこれ30分は飛んだり跳ねたり背伸びしたりで頑張っている。
しかし、そんな私にも救いの神は現れる。
「お姉さま、こちらの本が読みたいのですか?」
「あぁ、スオーちゃん。あれとって。」
「はい。」
スオーちゃんとは朱桜司くん。幼なじみのレオの影響で、そう呼ぶようになった。
「何の本ですか?これは。」
私に差し出しながらスオーちゃんが尋ねる。
「いやー、レオがねぇ。作曲のインスピレーションがわかないって言うから、参考になるかなって。なんか学校に居残っちゃってるし、ついでに借りよって思ってさ。」
「リーダーが…?気になりますね。どのような内容…で…」
ペラペラと、スオーちゃんがめくる。するとすぐさまボフンッ!と真っ赤になった。
「こ、こ、ここここれは!」
「え、ダメかな…ラブソング作りたいって言ってたからとびっきりの恋愛ものを選んだんだけど…。ほら、ア●ハライド全巻。この巻だけあんなとこにあって…いやぁ、困った!」
私が何冊もの本を掲げるとスオーちゃんはとたんに真面目な顔になった。
「最近の女の人は、こういうものを好むのですか…。お姉さまも、お好きなのですか?」
「あー、好きなことは好きだけど…なんか、現実じゃあり得ないじゃんって思っちゃって読む気失せるから…長続きしないで3巻とかで終わっちゃうタイプ。」
「…やはり、私は未熟者ですね……更に精進します。」
「あれ?話聞いてるかな?」
いきなり恋愛小説を探し始めたスオーちゃんをほおっておいて、私はレオの元へと急ぐ。どこだ~、レオ~!!