第11章 今日こそは私とデートしてください ー羽風薫ー
「深海先輩ってお母さんみたいですよね?」
私は薫さんに問うた。キョトンとする薫さん。
「お母さん?」
「うん!さっきは子どもかなって思ってたんですけどね、母性本能が出てくるっていうか!でもやっぱり母なる海から来たにはお母さんかなって!」
「うふふ…お母さんですよ~ほら、ほら」
先輩が両手を広げる。側にいた神崎くんが母上-!と全力で抱きつきにいった。
「かわいいこどもです、そうま~」
濡れるのも気にせず神崎くんは笑う。私はその光景をクソ羨ましいと見つめていた。
「あのー、あんずちゃん?」
薫さんがチョイチョイと手招きをして両手を広げる。
私はんん?と首をかしげる。
「んもう、俺をお母さんって思ってくれていいってこと!」
「………薫さんは言ってしまえば…ウォレットポジション!」
「財布なの俺!?」
「女の子達におごってるんでしょ?絶対財布って思われてますよ~。ていうか、私にもなんかしてくれたって良いのにっ!
…………って、あそこにいるのは天満くん!よぉし、一緒に一っ走りしてきます!!」
「あ、ちょっと!」
私は天満くんの元へ走る。よぉし、一っ走りして疲れてベッドに入ってゆっくり眠ろう!今日の予定、決まり!
「天満くーん」
「ねーちゃんっ!今日も一緒に走るんだぜーっ!!」
「うんっ!!今日はコロッケパンをかけて勝負だっ!!」
ビックリマークだらけの私達の会話にその場にいた人達が生暖かい目で見守りながら去っていく。
明らか子供扱いされている…!
「ねーちゃんっはやくはやく~っ!」
「…うんっ!よーし行くぞーっ!それぇぇーっ!!」
「わ、速いんだぜっ!負けないんだぜ~!」
ちょっと心にかかえる悩み事を振り切ろうと、私は敬人先輩に怒られるまで走り回った。