第11章 今日こそは私とデートしてください ー羽風薫ー
体操服なら水浴びしたってへっちゃらだ。
私はHEY!HEY!HEY!と深海先輩に水をかけたらふー、と棒読みで水鉄砲で顔面に水をぶっかけられた。
「ちょ、水鉄砲っ…!反則っ!!あははっ!!」
「それそれ~」
「やったな~!それそれそれっ!!」
人類は水鉄砲になんか負けないんだからっ!
私は無茶苦茶に水をかいて先輩にぶっかける。
いつの間にか神崎くんがいて、噴水の外で刀と扇子を振り回して応援してくれている。
「それいけ部長殿!!あんず殿もふぁいとであるっ!!」
「HEY!HEY!HEY!まだまだー!」
「えい~水鉄砲ビーム~」
「わ、何かヒーローっぽい…ってきゃーっ!!勢い強すぎっ!!」
お互いビッショビショになったところで終戦となり、私は噴水から出て太陽の光を目いっぱい浴びた。
「あーっ!この瞬間がすごく好きっ!楽しい~っ!」
「ふふふ、みずあびなかまです~」
先輩はまだ水の中にいる。その先輩を見ていると母性が湧き上がる。あー、なでなでしてあげたいっ!けど、先輩だもんなぁ。
差し出すに差し出せない右手。
しかし、なでなでしようとしていた私の頭をタオルでワシャワシャしてくる輩が現れた。
「わっ!!やめて~!濡れたままでいいのに~!」
「何言ってるの、あんずちゃん。こんなに濡らして~っ!風邪引くよ?」
聞き慣れた声に私はハッと顔を上げる。
「あれ、薫さんに見える。気のせいかな。」
「安心めされよ、あんず殿。我にも見える。」
「ちょっとちょっと、ひどくない?デートの相手の子が来れなくなっちゃったから、久しぶりに部活来ようかな~って来たのにさ!」
口調は素っ気ないけど、先輩は丁寧に私の頭を拭いてくれる。
「あばばばば、大丈夫です~!そのうちかわきます~!」
「あぁもうダメダメ!!あんずちゃんに会えないとか嫌だもん、風邪はひかないでっ!」
「あれ、幻聴かな、かっこいいこと言ってる気がする。」
「我にも聞こえた、あんず殿」
「だからひどくないっ!?」
先輩の手がようやく私の頭から離れる。私は手ぐしでさっさと髪を整え、伸びをして太陽光を前進に浴びた。