第1章 構わないで
タバコに火を付ける。
深く吸い込み、ふーっと煙を吐き出す。
かったるい。
何もかも、かったるい。
土手に腰かけて空を見上げる。
「おい。」
誰だよと思って睨み付けるように振り返る。
「お前、高校生だろ?」
「だからどうしたよ。」
「タバコ!」
うるせーなと思いつつ、今時、注意してくる大人なんて珍しいとも思った。
そこに立っている男はサングラスをかけ、ドクロのベルトをしている。
サングラスはともかく、ドクロのベルト・・・
「お前、タバコやめろ!」
「おっさん、何?私服警戒のおまわり?それともお節介?」
「子供が道を外れたら、注意するのが大人だ!」
すげー。まだ若いのに、昔の頑固親父みたい。
「おっさん熱いなぁ。」
「なんでもいいからタバコ!」
おっさんの情熱に負けた。
「よし。お前、まだ昼なのにどうしたんだ?学校行きたくないのか?」
「おっさん、ずかずか来んのな。」
「何か悩みがあるなら俺に話してみろ。」
「質問ならあるよ。」
「なんだ。」
「なんでドクロ?」
「これか、これは俺を引き立たせる秀逸なファッションアイテムだからだ。」
意味わかんね。
「この革ジャンは俺の信奉する尾崎と揃いでな・・・」
「(聞いてねーのに喋り出した)・・・尾崎ってドクロの革ジャン着てたっけ?」
「このドクロは俺の証だ。」
やべぇ、こいつ頭沸いてる。
とりあえず離れようと、腰をあげる。
「おっ、学校行く気になったか?」
「・・・」
返事するのも面倒くさいから無視する。
「元気になれよ!」
後ろでおっさんが大声を出す。
うるせー。