第7章 childhood friend(青峰大輝)
年の瀬まであとひと月半といった本日、晴天。
太陽が一日の仕事を終え、代わりに雲ひとつない夜空に浮かび上がったのは、居待ち月。
ゆっくりとお祈りすれば、あたしの願いも叶えてくれるかな。
茶色くて大きな木製テーブルを挟んで私の前に座っている男は、肌は浅黒く、髪は中縹色で艶がある。
目つきは悪く、身長も日本人には珍しく190センチを超える大男だが、短い前髪のせいかやや幼さが残るような印象も受ける。
「……んだよ、そのカオ」
仏頂面でそう言い放つその男の名は青峰大輝、あたしの幼少期からの幼馴染みだ。
「大輝から誘ってくるなんて珍しいからビックリしたの」
「いや別に珍しかねぇだろ」
「珍しいよ。っていうか初めてじゃない?」
「どっちでもいーわ」
素っ気なくそう言って、さして興味も無い様子で彼は窓の外へ目線を移した。
ここは、銀座の海老専門の老舗料理店だ。
先週急に連絡が来て、珍しく呼び出されたと思ったら終着点がこの場所で、正直戸惑いを隠せない。
前述したが、彼は私の幼馴染みである。
言い方を変えれば、幼馴染み以外の何者でもない。
……あえて言うなら、あたしは大輝が好きだった。
長い間、彼はただ片割れのように身近に居て、自然と自分の事を理解してくれている、そんな存在だった筈なのに。
家族よりもずっとずっと身近なひとだった筈なのに。