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【黒バス:R18】with gratitude

第6章 Stay Home(黄瀬涼太)


「みわ」

「ん……っ、は、涼太……おめでとう……」

くしゃりと触れた髪は柔らかくて、胸板は固くて、涼太の匂いしかしなくて、重なった唇は熱くて……五感が全て、涼太に支配される。

「ありがと、みわ」

耳が溶けてしまいそうだ。
"母親"ではなく、私の……黄瀬みわの存在を認めて貰えているんだという安心感。

好き。大好き。
気持ちが溢れて、止められない。

「生まれてきてくれて、そばに居てくれて、ありがとう、涼太……」

涼太のお誕生日だというのに、貰ってばっかりじゃない。
情けないことに、涙まで出てきた。

服の裾から侵入してくる大きな手を、止められない。
触れて欲しい。一番、奥まで。

続く口付けに、ぼんやりとした頭。
次に耳に届いて来たのは……

「ママぁ〜……」

その声に、文字通り飛び起きた。
私に覆い被さっていた涼太も同じだ。

言葉を交わす暇もないまま、ふたりで声の主の元へ走る。

「目が覚めたっスか、おはよ」

「お腹空いちゃったかな」

物凄い切り替えの早さに、涼太と目を合わせて笑った。
この小さい生き物に、大人ふたりがいつも翻弄されているのがなんだかおかしくて。

「残念だけど、ちょいお預けっスね」

耳元で囁かれた言葉で簡単に熱くなる頬。
身体の中で燻る熱がなかなか引かぬまま、キッチンで我が子の夕食を温め始めた。

ダイニングでは、料理を待つ息子を涼太が見守ってくれている。

いつもの風景だ。

こういう状況になって、気付かされた。
今まで当たり前だったことが、どれだけ貴重で尊いものだったのかって。
日常とはこんなにも脆いものだったのかって。
壊れてしまったものを、失われてしまったものを当たり前に戻す事は、もう出来ないんだって。

「涼太もスープ、もう少し飲む?」

「お、いいスね。もらおっかな」

だから、今この時間を大切にしなきゃ。
それは、刹那的なことじゃなくて、未来を守るために。

愛するひとたちとこれからも、生きていくために。






              HappyBirthday,RYOTA♡

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