第13章 Mic check!(黄瀬涼太)
今年の涼太のお誕生日は、梅雨時とは思えない快晴だった。梅雨前線はどこかへいってしまったらしい。
もう、一日中クーラーをつけてないと過ごせない暑さだ。
空調の効いたひんやりした空気が、汗をかいた肌に気持ちいい。でも汗が冷えると風邪ひいちゃうから、何か着ないと……と思うけれど、身体が怠くて動けなくて。
そんなだらしない私に、涼太がタオルケットをかけてくれた。
「ありがとう……」
「だいじょぶ? 声枯れてる」
「……んんっ、平気、ちょっと乾燥してたからかも」
……そんな事を言って、何が原因かなんて本当は分かってる。多分、涼太も。
「あったかいお茶淹れよか」
「あ……まだ、大丈夫」
「ん」
なんで私の考えていることが分かるんだろう。
涼太はベッドを抜けるのをやめて、また抱きしめてくれた。
まだ……くっついていたい。
忙しいひとなのに、こんなに独占しちゃって大丈夫かな。
そんな事聞くと、いつも怒られちゃうけど。
涼太、いいにおい……。
それに、涼太が撮影でもらってきてくれたお花たちが、お部屋中に良い香りを届けてくれる。今年のお誕生日イベントのテーマは『ボタニカル』なんだって。
生花もあったけれど、ドライフラワーも結構あって。
スタッフさんに、ドライフラワーは風水的にあまり良くないからと、飾り方の注意点を聞いて来たようだった。
(実際は、帰宅した涼太は殆ど覚えてなくて、ふたりでネットで調べたんだけれども)
たくさんの花に囲まれても涼太が一番華やかなんだから、すごいよね。
「みわ、今日の配信、怒ってた?」
「え……? どうして?」
突然の質問に、またアホヅラを晒してしまった。
「配信終わって部屋戻った時、暗い顔してたから」
できるだけ平静を装っていたつもりだけど、顔に出てしまっていたらしい。
「……嫌な質問、のせいかも」
「ん? なんかあったっけ」
涼太はあっけらかんとそう言った。