第13章 Mic check!(黄瀬涼太)
「いや、なんだかんだみわも疲れてんのに寝かしてやらずにこうしてんのはオレのせいだから、重なったんスよね」
「もう、これ以上他のひとと一緒にしたら、私、怒るよ」
なんか、感情がぐちゃぐちゃに乱れて来て、涙まで出て来た。
今まで涼太から受け取ったたくさんの想いが、胸の中で渦巻いている。
「……みわ」
ああ、涼太が困ってるのが分かる。
怒ったり泣いたり、私にも私が全然分かんない。
高校生じゃないんだから、何してるの。
でも、止められなくて。
「涼太のことが、大好き。無理矢理付き合わせてる、とか、そんな風に思われるの、いやだよ。我慢して抱かれたことなんて、嫌な想いしたことなんて、ただの一度もないよ。いつも涼太に甘えてばかりで任せてばかりな私が悪いんだけど……」
「みわ」
涼太が、宥めるように優しく抱きしめてくれる。世界で一番、安心する場所。
涙のせいか、さっき晴れたのとまた違った濃度の靄がかかりだした。
涼太にどうやったら伝わるのか、まだ分からないままだ。
胸元にうずめた顔を上げると、琥珀色の瞳に吸い込まれるように、また静かに唇を重ねた。
拙い舌使いだけど、涼太も応えてくれてる。
鎮まった熱が、じりじりと温度を上げていくのを感じる。
イチャイチャしたいだけ、って言っていた気持ちも良くわかる。こうして交換する熱が心地良くて、ずっと浸っていたくなるくらいだ。
涼太の髪、サラサラで気持ちいい。
首元は少し汗ばんでいるのか、しっとりしてる。
触れたい。
もっと。
頬に添えられた大きな手を取る。
大きな掌に長い指、形の良い爪。
手の甲の筋に沿うように、そっと撫でた。
Tシャツの裾から手を差し入れると、鍛え抜かれた腹筋に触れた。
胸の真ん中に手を当てると……とくんとくんと、速い鼓動を感じる。
形を確かめるかのように鎖骨に触れてから、肩、腕、腰……と下りていく。