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【黒バス:R18】with gratitude

第13章 Mic check!(黄瀬涼太)


『今日はみんなありがとう!
んじゃ、また次の配信でお会いしましょー。おやすみ〜』

締めの雑談を終えて配信が切れるなり、自室から出て来た涼太はまっすぐ私のところへ向かって来た。

「お疲れ様、涼」

そう声を掛けようとした瞬間、彼の胸の中に閉じ込められる。

「はー、癒し」

それはこっちの台詞だ。
あったかい。彼の香りを胸いっぱい吸い込むと、ささくれ立っていた気持ちが落ち着いて来た。

「……配信、疲れたでしょ。お疲れ様」

「ん〜、喋ってただけであんま疲れる要素ないんスけどね」

「でも……すっごく怒ってたし……気疲れしたんじゃない?」

緩やかに上下していた胸の動きがぴたりと止まる。

「え? オレ、顔に出てた?」

「顔、っていうか……雰囲気っていうか……」

なんて表現するのが正確なんだろう。
違和感っていうか……なんか、空気の色が変わるっていうか……。

「やっべ。バレてないといーけど」

「大丈夫だと思うよ。全然露骨な感じじゃなかったから」

それこそ、付き合いが長い人間じゃないと気が付かないと思う。
涼太は本当に、メンタルコントロールが上手だ。選手生活が長いからだろうか。

「いいな、妻の余裕って感じ。うちの嫁さん最強」

涼太は微笑んで、額と額をこつんと合わせた。
気付いてないかもしれないけれど、表情に疲れが滲み出てる。

……配信だと"奥さん"って言うのちょっと照れるけど好きかもしれない。
前に使い分けの理由を聞いたら、コメントで視聴者さんが"奥様"と言うのでそれにつられてしまうってことだったけれど、なんとなく新鮮な感じがする。

また、ツボがマニアックって言われちゃうかな。

「コーヒー淹れようか? さくらんぼ、冷えてるよ。さつきちゃんが送ってくれたの」

「へえ、桃っちが?」

「うん、今お仕事の研修で山梨に行ってるんだって。それで」

今日はいつもの配信じゃなかったし、疲れているみたいだから少し気分転換をした方がいいかも。
桃井さつきちゃんがいっぱい送ってくれたさくらんぼ、ありがたく頂こう。


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