第13章 Mic check!(黄瀬涼太)
涼太の言わんとしている事はよく分かる。
彼は家に居る時に、文字通りほぼ全ての家事育児をやろうとしてくれるから。
涼太が留守の間はシッターや家事代行など積極的に頼んで欲しいと言うし、とにかく私のことを優先して考えてくれている気持ちがものすごく伝わってくる。
でも、それって本当に当たり前のことじゃないんだって、この質問を読んで痛感した。
なんだろう、質問者さんに他意はないのかもしれないけど、読んでると胸の真ん中あたりがチクチクする言葉たちだ。
『ほっといたらいつ死んじゃうか分からない赤ん坊を休まずに見てるのに、やれ体型だ女だなんだって、セックスのことしか考えてないんスかね? 命削って出産して、ボロボロの身体なのに、一番近くにいる自分が労わってあげなくてどうするんスか?』
産後、体調も戻らず大変だった時期を思い出す。
涼太がお仕事で家を空ける時は、お義母さんやお義姉さんに声を掛けてくれて、皆で助けてくれた。
一人で辛いのを抱え込んでいたら、今頃どうなっていただろう。
お仕事も大変なのに、いつも気遣ってくれて。
『仕事すんなってことじゃないスよ? 金はもちろん大事。なきゃ生活出来ないし。でも、だからって金稼ぐイコール子育て手を抜いていい理由にはならないんスわ。子どもにとって親はオレ達しかいないんだから。金だけ稼いでたってそんなん凄くも偉くもないスよ』
一見炎上してしまいそうな強い意見に見えるけれど、ちゃんと家族の方を向いてくれている涼太が言ってくれると、説得力しかない。
信頼って、一日では築けないものだから。
『オレはめちゃくちゃ奥さんを尊敬してる。毎日きちんと子どもたちに向き合って過ごしてる。仕事なんかやれば金貰えるけど、育児は休みもないのに一銭も貰えないし、結果がすぐ出ないっスからね。
それなのに、全力で頑張ってる彼女を見ると、オレも頑張らなきゃって勇気を貰えるんスよ』
わ、わ……当たり前だけど、これって私のことだよね?
そんな大層な事してないんだけど、涼太はすごく大袈裟に褒めてくれる。