第12章 thank you for everything(黄瀬涼太)
「ふふ、もう寝ちゃった」
「秒だったっスね。めちゃくちゃ走り回って遊んだって言ってたし」
「可愛い」
「ホント、可愛すぎ」
子どもたちの寝顔ってなんでこんなに可愛いんだろ。食べてしまいたくなる。
みわも疲れただろうから、少し一緒に寝られるといいと思い、声を掛けるのを控えていた。
しばらく走って、後部座席から声がしなくなったタイミングでバックミラーに視線を送ると、左右で口を開けながら寝ている子どもたちと、真ん中でぐらんぐらんと頭を揺らしているみわの姿。
かくん、と一瞬落ちてからすぐに頭を起こし、ぷるぷると横に振っている。
「寝てていいっスよ」
「もう平気、ちょっとうとうとしちゃった、ごめんね」
そう返事をしたものの、その目はとろんとしている。
そりゃそうだ。潰してしまうほど激しく抱いた自覚がある。
外は暗いし雨だし、珍しくオレは話しかけないし、寝ろと言ってるようなものだろう。
眠気と戦うのはしんどそうだ。
「んじゃ5分したら起こしてあげる。ちょっと寝た方がスッキリするっスよ」
「そう……かな、その方がいいかな、うん、ありがとう、お願いしてもいい? 5分だけ、ごめんね……」
「オッケー。おやすみ」
信号で停車したタイミングで後部座席を振り返ると、三人並んで安らかな顔で寝ていた。
あ、めちゃくちゃ幸せだ。
なんかもう、この存在がギフトだ。
生まれてきてくれてありがとう、って毎年言ってくれるけど、こっちのセリフだ。
しかも、それに加えて可愛い子どもたちまで生んでくれて、神様か。
みわ、ありがとう。
オレを幸せにしてくれて。
「一生かけて、守るから」
愛車だけが聞いていたその呟きは、雨音にかき消されて溶けていった。
Happy Birthday,RYOTA♡♡♡