第11章 thank you for everything(黄瀬涼太)
もう、自分にガッカリである。
ガッカリとかいうレベルではない。
もう一回最初からやり直したい。
「……焦らしプレイのはずが……みわにイカされたんスけど……」
「あの、が、我慢出来なくて……ごめんね」
そう言葉を交わして、繋がりを解かないまま、また唇を重ねた。
オレの首に回した腕が、微かに震えてる。
キスの後に無言で胸元に顔を埋めるその姿を見て、めちゃくちゃ寂しい思いをさせていたんだと改めて思い知る。
普段はどんなに大変でも弱音を吐かず、他人の愚痴や悪口は絶対言わない。
たまにケンカする時以外、不満なんて聞いた事もない。
「みわ、ごめんね。いつも待たせてばかりで、ごめん」
みわは、小さく首を横に振った。
こんな出来すぎた嫁さんと子どもたちを寂しくさせてるなんて、マジ何やってんだろ。
しばらくバスケ以外の仕事、セーブする。
今、心に決めた。
「……んじゃ、軽く風呂にしますか」
「きゃ……っ! ちょっ、ちょ、涼太っ!」
「軽い軽い」
細い身体をひょいと抱き上げて、バスルームへと連行する。
落ちないように咄嗟にしがみついてくれるのが子どもみたいで可愛くて。
「よっと」
「ご、ごめんね、重いのに……」
「軽いってば」
クリアのバスチェアへ座らせると、オレが彼女の一番奥で放った精液が、どろりと流れ出ていくのが見える。
あっ、と恥ずかしそうに慌てて隠す姿を見て、まためちゃくちゃ抱きたくなった。
なんでこう、感傷に浸っていた時間を台無しにするのだろうか。オレという生き物は。
出ていかずに、全部彼女の体内に沁み込んでしまえばいいのに。
いつまでも湧き出る焦りにも似たこの支配欲に、自分で驚く。
「……ずっとみわの中に居られたらいいのに」
覗き込んだ瞳は、潤んだように揺れる。
その視線は頬に添えた手に向かって……オレの欲を察知したかのように、そのまま瞼をそっと閉じた。