第11章 thank you for everything(黄瀬涼太)
「……痛く、ねえスか」
つい、最中にそう聞いてしまうのは昔からの癖だ。
みわを抱くようになってから、この行為がどれだけ女性の負担になるのかを知った。
そりゃそうだ、単純に体格差があるし、筋肉量も全く違う。
更に細身の彼女とスポーツ選手の自分では、普通の男女以上にかかる負荷が大きいのだ。
「うん……っ、だい、じょ、ぶ……涼太こそ、身体……辛くない?」
「ぜ〜んぜん。めっちゃくちゃ気持ちイイんスわ」
「んあぁ……っ」
前戯でほぐしたナカは柔らかく十分に湿っていて、きゅうきゅうとオレを締め付ける。
とにかくなんかもう、すげえ気持ち良い。
体重をかけ、一番奥を刺激すると同時に溶けるような快感に変わっていく。
とろんとした目に、オレが映ってる。
彼女には、オレはどんな風に見えているんだろうか。
出逢って、家族になってもう何年も経つのに、付き合い始めたあの頃と同じようなことを考えてしまうのがおかしくて。
大切に、壊さないように、優しく、そうしてあげたい気持ちに嘘はないのに、理性の裏側に凶暴なオスである自分の欲望がべったりと張り付いて機会を窺っているのも感じてる。
大丈夫、その欲はちゃんと押さえつけられる。
飼い慣らす術は身に付けている。
「涼太……」
「ん、どーしたんスか、やっぱ辛い?」
「今日は……もっと、して……」
「うん、え!?」
「もっと……激しく、してほしいの」
そう、ちゃんと、理性で押さえつけられるっスよ。
ガマンすんのは慣れてるから。
うん、でもね、こんな風におねだりされた時の抑え方まで想定してないんスわ。
「そんな可愛いこと言って……途中で止めらんないよ、いいの?」
自分の口調に余裕がなさすぎて笑える。
頬を染めたままこくりと頷いたのを見て、そこからは若い頃のように一心不乱に溺れた。