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【黒バス:R18】with gratitude

第11章 thank you for everything(黄瀬涼太)


今日の仕事は全部終わって、さあ帰ろうという時になってスタッフの皆に呼び出され、再びスタジオへと舞い戻って来た。

「黄瀬君、お疲れ様! 帰るところをごめんね」

「まだ何か残ってたっスか?」

「じゃーん、お誕生日おめでとう!」

ガラガラと手押しワゴンに乗せられて来たのは、オレの顔がデコレーションされているスクエア型のケーキだった。写真集の表紙になった写真の顔だ。

「すっげー! ありがとうございます!」

「健康に気をつけて一年過ごしてね」

イエローのトルコキキョウのアレンジメント花束には、黄瀬君お誕生日おめでとうと書かれたカードが刺さっている。

みわが好きな色合いだ。
家に飾ってある花は、圧倒的に黄色が多い。
ダイニングに飾ろうか。

結婚式以来の、でっかいケーキにナイフを入れる儀式。
あらゆる角度から撮られ、切ったケーキはひと切れずつ皆で食べた。
クリームがしつこくなくあっさりな甘さで、めちゃくちゃ美味い。
周りに乗ってるフルーツも新鮮なものばかりだ。
どこのお店だろう、後で聞いておこう。
今度お土産に買って帰りたい。

「あとこれ、いっぱいあるからご家族の分も持って帰って!」

「いいんスか? やった」

撮影スタジオの端にある机の上に広げられた色とりどりのドーナツの中から、家族の皆が好きなものをピックアップして箱に詰めた。

今年はドーナツがテーマだったから、協賛企業から差し入れをたんまりといただいたらしい。

懐かしいな、練習帰りに海常の皆でドーナツ屋にも行ったっけ。

あの頃は学校にバスケにと多忙なつもりで生きていたけど、大人になった今なら分かる。
学生時代は、楽だった。
なんだかんだ今よりずっと時間に余裕があったし、何より若さがあった。

そんな事考えるなんて、自分もトシ取ったなあなんて苦笑しながら箱を閉じた。


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