第9章 Some things never change(黄瀬涼太)
「オハヨ」
「おはよう、昨日はありがとうね。もう少し寝てても大丈夫なんじゃない? 辛くない?」
「ん、平気っス」
昨夜、夜泣きに対応してくれたお陰で私はいつもより眠れたけれど、涼太の目の下にはうっすらとクマが出来ている。
今日、黄瀬涼太誕生祭イベントに登壇するみたいだけれど、大丈夫かな……。
今年は、レトロポップがテーマなんだって。
写真を見せて貰ったけれど、大正浪漫を感じさせる素敵な衣装だった。
「パパ!」
「おー、おはよう」
リビングへ入って来た涼太に駆け寄る息子。
口の端にヨーグルトがついたままだ。
「パパ、おたんじょうびおめでとう!」
「ありがとう! プレゼントくれるんスか?」
小さな手から渡されたのは、大好きなパパの似顔絵を描いたメッセージカードと競技用にも使えるソックス。
私からのプレゼントは間に合わなかったけれど……息子が描いてくれたカードと、パパに似合いそうと言って選んだソックスのプレゼントは何よりも嬉しいと思う。
「涼太、お誕生日おめでとう。私はちゃんとお誕生日までにプレゼント買えずにごめんなさい」
「カード、ふたりで作ってくれたんスよね? ここにみわからのメッセージも書いてあるし。これが何よりのプレゼントっスわ」
鼻の下を伸ばした涼太は、とっても幸せそうに微笑んでくれた。
辛いことも、悲しいことも、やりきれないことも、沢山ある。
私ひとりじゃ絶対、乗り越えられないようなことも。
でもこの笑顔のお陰で、家族みんなのお陰で、周りの大好きな友人たちのお陰で、私は今日もここに立っている。
これからもご縁を大事にして、愛する人たちと一緒にいたいな。
強いひとでありたい。
優しいひとでありたい。
そんなことを、朝から噛み締めるように考えたよ。
今日は特別な一日だから。
あなたが生まれた素敵な日、笑顔で過ごそうね。
Happy Birthday,RYOTA♡♡♡