第3章 ひやっこい薄膜。
私、鳴海真依の朝は、普通の中学二年生よりも少し早めだと思う。
起きたらまず自分の布団を押入れに仕舞い、身支度を整えたら二人分の朝食を作る。
まずお米を炊くところから始め、おかずと汁物に取り掛かる。
おかずはその日によってまちまちだが、基本的には魚が多い。
村の人が定期的に差し入れてくれる供え物や、社の裏の小さな畑で採れた野菜とかがあるから、二人で生活する分には何ら困らない。
あとは火にかけて放って置くだけになったら、次は洗濯だ。
と言っても洗ってくれるのは機械なので、私はスイッチを押すだけだけど。
ご飯が炊きあがったら、出来上がったものをそれぞれ皿に盛り、お膳に乗せてうろこ様の所へ持っていく。
『うろこ様〜、朝食できましたよ』
寝る時でも布団を敷かないうろこ様は、いつもの様に畳の上に寝転がっていた。
肘を突いて頭を擡げているから、本当に寝ているのかどうかは定かではないけれど。
「んん゛……、なんじゃもうそんな時間か」
気だるげに身体を起こしたうろこ様は、天井に向けて腕を伸ばし大きく欠伸をした。
そして目の前にお膳を置けば、すんすんと鼻を鳴らす。
「今日もただの味噌汁か……」
恨めしそうにこちらを見る彼が言いたいのは、いつになったら豚汁を作るのかと言うことだろう。
前に一度豚汁を作ったらえらく気に入ったらしく、それ以来こんなことばかり言ってくるから困ったものだ。
『……お肉が安かったら、今度買ってきます』
また今度、あかりさんにお肉の安い日を教えてもらおうと心に決めた。
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