第2章 うつつ
「ん…。…菜緒…?」
俺は騒がしい物音で目が覚めた。すると、そこには――…
「っ!?」
びびった。般若ってのは、今朝の菜緒のことだよ。まさに鬼のような形相。無垢な寝顔とのギャップがありすぎて、俺はマジで言葉を失った。
そしてワケわかんないでいる俺への第一声がコレ。
『ちょっと!なんでこっちに連れてくんのっ?ベッドで寝たら朝まで寝ちゃうに決まってんじゃん!馬鹿じゃないの!?』
暴言。あまりにも暴言すぎて、寝起きの頭に入ってこなかった。
どうやらあの企画書?今日必要なものだったらしい。どうしても昨日のうちに仕上げたかったから、あえて机で仮眠をしてたんだ、と…
って嘘つけよっ!あれは完っ全朝までコースの爆睡具合だったって!あんなん…机でもどこでも同じだっつのっ。そんくらいグースカ寝てました!大体、運ばれたのだって全然気付かなかったんだろ!?
――とか反論したい気持ちはあったが、何せ寝起き。体も口もついてこない。
そうこうしてる間に菜緒はバタバタと着替えて出勤してしまって。俺は――…ひとり、菜緒んちに置き去り。急に静かになって、ホント『シーン…』ってカンジ…。
「…」
寝ぼけた頭が徐々に目覚めてきて。目覚めるほどに、イライラも目覚めてきて。
俺もシャワーだけ浴びて即部屋を出た。時間的にはだいぶ早かったんだけど、もうそこに居たくなくて。喫茶店でモーニング食ってコーヒー飲んで。それでも全然イライラがおさまんなくて。
そして、今に至る。