第1章 ゆめ
「ねえ。俺のメガネ…」
…寝てる。
机に突っ伏すようにして、ペン握ったままご臨終(笑)。
ま、最近仕事大変だって言ってたからな…。
その辺にあったブランケットをかけてやって。俺はとりあえずメガネ探しを再開した。でも裸眼だから超難航。
「ど~こやったんだぁ~…?」
菜緒は俺が自分のものを置いてくのを嫌がる。
ちゃんと付き合ってんだよ?俺ら。正真正銘、正式なカレカノ。けど、俺の私物が自分ちにあるのはヤダって言うんだよね。
確かに、そんな頻繁には来ないし、泊まることなんて滅多にない。だから置いとく必要はないんだけどさ。でもそんなこと言われたら、こっちだってちょっと傷つくでしょ。何でだよって、前に理由を聞いたことがある。そしたら…
『普段一人でいる時、見て思い出すのヤなんだもん。あと…別れた時、ものすごく処理に困るから』
マ、後半のは俺もわかるよ。申し訳ないけど捨てといてってなる。もし、万が一そうなった場合はね?
でも、前半はさ。むしろ逆じゃない?そんなマメに会えるわけじゃないし。もちろん俺の私物で我慢しろってんじゃないけど…。なんか、そばにいる感があるっていうかさ。繋がってる安心感っていうか…。
や、もちろんそんなのなくたって、ちゃんとココロで繋がってますけどね?
まあそんなわけで。この家にある俺の私物に定位置は存在しない。『なるべく持って帰って!』って、今でも口をすっぱくして言われるし。けど、俺はちゃくちゃくと私物を増殖させてる。もちろん計画的に(笑)。
つっても、んな大したもんじゃないけどね。パジャマとかメガネとか歯ブラシとかちょっとしたストレッチグッズとか…。え、多い?や、フツーに家帰ってリラックスするのに必要な道具だけだよ。ま、要するに“お泊りセット”ってやつですか。