第84章 人を陥れようとすると足をすくわれる。
屯所を出た先の人通りの少ない路地にて、葵咲はやっと解放してもらえた。だが離してもらえたからといって葵咲の怒りが収まっているはずはない。
銀時「オメーら私の身体で何させるつもりだァァァァァ!」
一郎「銀のモノマネ上手くなったんじゃね?すげーそっくり。」
激怒する葵咲を目の前に一郎兵衛は話を反らそうとしてみるものの、そう上手くいくはずはなく、葵咲は怒りを露わにしたまま、再び屯所へ戻ろうと踵を返した。
銀時「うるせェェェェェェェ!!絶対阻止して…!」
総悟「葵咲、待ってくだせぇ!」
銀時「!」
屯所へと向かおうとする葵咲の腕を掴み、それを止めようとする総悟。だが先程の悪ふざけをしようとしていた雰囲気とは違っており、葵咲はその足を止めた。
総悟はきゅっと葵咲の腕を掴んだまま、俯いて声を絞り出す。
総悟「旦那に!…旦那に少し時間を与えてやってくれやせんか・・・・?」
銀時「どういう事?」
意味が分からない。総悟の伝えようとしている事の意図をくみ取れない葵咲は、片眉を上げて怪訝な顔を浮かべる。そして総悟は少し悲しそうな表情を浮かべ、葵咲を見据えた。
総悟「少しだけで良い。少しだけで…いいんでさぁ。」
一郎「?」
総悟「土方さんとゆっくり過ごす時間を与えてやって下せぇ。ひと時の時間を。勿論、一晩なんて言いやせん。だから数時間。いや、数分だけで良いんでさぁ。」
銀時「!」