第84章 人を陥れようとすると足をすくわれる。
その言葉に、何かを察したように真剣な表情へと切り替える葵咲。
少し考え込むように黙った後、葵咲は言葉を押し出した。
銀時「…分かった。ただし、戻った時に戻る前と変わった事があれば、総悟君もただじゃおかないから。」
総悟「有難うございやす…!」
渋々ではあるが、承諾の言葉を聞いた総悟はパッと顔を明るくする。そんな嬉しそうな笑顔を見せられては、もう何も言えない。葵咲は一つため息をついてボリボリと頭を掻いた。そんな葵咲を目の前に、総悟はいつもどおりの表情に戻し、右手を挙手する。
総悟「それともう一つお願いが…」
銀時「?」
今度は何だ。そう言わんばかりの顔で眉根を寄せる葵咲。だが総悟はこれに特に動じる様子もなく、いつものトーンで言葉を返す。
総悟「その身体で『総悟君』って呼ぶのはやめてもらえやせんか?正直めちゃくちゃ気持ち悪いんでぃ。」
銀時「・・・・・。」
そうして話がまとまった。一郎兵衛は葵咲には気付かれないように気を遣いながら、総悟へニヤリと笑みを向ける。
一郎「上手い事言うなぁオイ。確かにああ言った方が葵咲の性格なら承諾してくれるな。数時間ありゃ銀にフラせる事は出来そうだ。けど、大丈夫かよ?戻った時、土方とギクシャクしちまわねぇ?」
葵咲の周りの敵を蹴落としたいと思っているとはいえ、やはり葵咲の事は心配な様子の一郎兵衛。失恋等、心の傷は自分が癒してやりたいとは思うものの、仕事上のギクシャク、万が一パワハラなんかが起きてしまった場合に、葵咲の苦しむ姿は見たくないと思っているのだ。
だがそんな一郎兵衛の心配をよそに、総悟は腹黒い悪魔の笑顔を浮かべる。
総悟「別に何も間違った事は言ってねぇだろぃ。それに、葵咲なら良い感じの行動起こしてくれそうだからな。」
一郎「?」