第83章 悪気のない天然の方が罪な事もある。
そうして屯所を出た二人は、スタ●へと足を運んだ。店内は生憎の満席。ひとまず飲み物だけを調達し、歩きながら飲もうという話になった。
総悟は葵咲を店の外で待たせて、自分が飲み物を買いに行く提案をする。
総悟「葵咲は何飲む?」
葵咲「んーと、じゃあ私はストロベリーフラペチーノにしよっかな♪」
総悟「分かりやした。じゃあちょっと待っててくだせぇ。」
葵咲「うん、ありがと♡」
好意溢れる笑顔を向けて総悟の背を見送る銀時。その姿が店内へと消えるのを見届け、再び黒い笑みを浮かべた。
(葵咲:フン、チョロイな。)
そして数分後、飲み物を二つ抱えて総悟は葵咲の元へと戻ってきた。
総悟「お待たせしやした。」
葵咲「ありがとー♡」
実は葵咲と入れ替わってから飲み物を一滴も口にしていない銀時。喉はカラカラで限界だった。飲み物を受け取るや否や、すぐに口にする。甘い飲み物を美味しく頂こうとしたのだが…。
葵咲「…ん!? んがァァァァァァァ!!」
甘い口になっていたところに、何やら激辛の液体が喉へと注がれ、火を吹く勢いで吐き出した。
そして思いっきり“銀時”そのものの形相で総悟を睨んだ。
葵咲「これ、おま、タバスコ入ってんじゃねーかァァァァァ!!」
言い終わるや否や、総悟は冷たい目つきで刀を銀時の首元へと当てる。
葵咲「っ!」
総悟「テメェ、葵咲じゃねーだろィ。何者でぃ?」
葵咲「!?」
バレていた。葵咲が葵咲でない事に。殺気に満ち溢れる総悟を前に、銀時は冷や汗を垂らした。返答に困り、言葉を失っていると、総悟はニヤリと笑みを漏らす。
総悟「その面、図星だな。なんでバレたって顔に書いてやがる。葵咲はもう俺の事は“そーちゃん”って呼ばないんでぃ。」
痛恨のミス。そういえばそうだった。高杉との抗争でそんな事言ってたっけ。
その答えに下唇を噛む銀時。苦虫を嚙み潰したような表情を浮かべていると、痺れを切らした総悟が刀の刃を立てて更に鋭い睨みを利かせた。