第83章 悪気のない天然の方が罪な事もある。
話の区切りがついたところで、月詠がふと葵咲の方へと目を向けて言葉を紡ぐ。
月詠「それよりぬしら、最近よくつるんでおるらしいな。」
銀時「え?会ったのは華月楼ぶりだよ。」
きょとん顔で“葵咲”としての事実を口にする葵咲。その返答にヒヤリと顔面蒼白になるのは一郎兵衛だ。だが一郎兵衛が注意する前に月詠が片眉を上げながら不審な眼差しを向けた。
月詠「? この間飲みに行ったと聞いたが。」
その質問に一郎兵衛は慌てて葵咲を小突きながらコソリと話し掛ける。
一郎「お前は今銀だろ!俺ら先週飲み行ったんだよ。」
銀時「えっ!あ、そう!そうなんだよ~!毎週の逢瀬が欠かせなくてな!」
一郎「彼女かよ!週一では会ってねーよ!」
そのツッコミを受けて葵咲は、ハッとなり、冷や汗を垂らしながらも取り繕うように言葉を繋げる。
銀時「予定が合えば飲みに行っててよぉ~。ニート同士時間有り余ってるからよく飲みに行っててさぁ~。俺らマブになっちまったんだよ、なっ?」
一郎「いや、マブまではいってねーけど。つーかニート同士って失礼すぎだろ。まぁ飲み友達ってところだな。」
一郎兵衛にとっては聞き捨てならないワードが含まれていたが、あまり掘り下げるとまた墓穴を掘り兼ねない。ここは一郎兵衛が折れる事にした。
そんな葛藤がある事など微塵も知らない葵咲は、ふと何かを思い付いたように右手をパチンと鳴らした。
銀時「あ、そうだ!良かったら今度四人で飲みにでも行かねぇ?俺と一郎兵衛(コイツ)と、お前と葵咲とで!」
正直言って何故このタイミングでそんな提案を?そう思った一郎兵衛だったが、提案自体は悪くない。葵咲のその申し出に一郎兵衛も笑顔で賛同した。
一郎「おっ!いいねぇ~!」
月詠「! ・・・・・。」
男二人で盛り上がる中、あまり気乗りがしないといった表情を浮かべている月詠。
そんな彼女を気遣うように葵咲が言葉を掛ける。