第83章 悪気のない天然の方が罪な事もある。
妙と九兵衛に遭遇してしまった葵咲達。銀時、一郎兵衛は勿論の事だが、葵咲としてもバレたくない思いは同じだった。中身が入れ替わったなんて事が知られれば、どんな噂が立つか分かったもんじゃない。実際は何事もなく一日を過ごしたのだとしても、色々な想像が巡って噂は一人歩きしてしまうだろう。葵咲は内心冷や汗を垂らしながら銀時になりきろうとする。
銀時「や、やぁ。元気かい?お妙さんこそ何してるだい?」
妙「え…っ。」
(葵咲:俺そんな喋り方じゃねェェェ!『お妙さん』なんて呼んだ事もねぇしィィィ!!)
いきなり地雷を踏み抜く葵咲。葵咲は緊張のあまり、誰とも言えないキャラクターで発言してしまった。
それを見た妙と九兵衛は一歩引いて訝しげな顔を浮かべている。
妙「…銀さん、どうかしたんですか?」
九兵衛「何か悪い物でも食べたのか…?」
葵咲「めちゃくちゃ不審がられてんじゃねーか!(コソッ)」
二人の様子を見て地雷を踏んだ事に気付いた葵咲は、ハッと我に返った。
銀時「いや、別に何もな…ねーよ!」
少し冷静さを取り戻して銀時らしく発言してみたものの、妙と九兵衛の不信感は変わらぬまま。それを見て葵咲は瞬時に頭を切り替えた。ここは先程の変な喋り方を訂正するのではなく、肯定してそんなキャラへのキャラ変を試みた方が良いのではないかと…!
銀時「ちょっと人というモノの尊さ、素晴らしさに触れる機会があっただけさ。天は人の上に人を造らず、人の下に人を造らず…。そう、敬うべきは人なのさ!その事に気付いた僕は、まず始めに話し方を改め、呼び方は“さん”付けに変えた。ほら、人と言う字は支えあっているだろう?」
そう言って葵咲は両手を使って人という文字を表す。そして葵咲は爽やか風に右手で髪を掻き揚げ、左手を二人の前に差し出した。
銀時「さぁ、僕らも手を取り合って生きていこう。人生に必要なのは助け合う事の出来る仲間なんだ!」
そんな謎の即興劇を目の当たりにした銀時はすかさずツッコミを入れる。