第82章 マウスの実験はあてにならない。
銀時と一郎兵衛は葵咲にボコボコにされた。二人をボコっても葵咲の怒りは収まらない。二人を目の前に正座させて説教を続ける。
銀時「なーんかコソコソしてると思ったら!俺と一発?なに人の身体で勝手な事しようとしてんのよ!!」
葵咲「なんで俺まで!?」
銀時「一郎君の提案に心揺らいでたでしょーが。」
その指摘には返す言葉もない。銀時は大人しく下を向いた。葵咲が目を瞑りながら、くどくどと説教を続けている最中、一郎兵衛はコソッと銀時に話し掛けた。
一郎「しゃーねぇな。じゃあ報酬はこの芝居小屋のグッズおよび俺らの写真販売の権利、一年間でどうだ?“西洲斎写楽(さいしゅうさいしゃらく)”の絵はまだ値が付かねぇだろうが、俺らの写真は結構高く売れるぞ?」
葵咲「よし。その話乗った。」
銀時「ちょっと。聞いてんの!?」
葵咲・一郎兵衛「聞いてます!すんません!!」
なお、西洲斎写楽とは一郎兵衛のペンネームだ。絵師として活動する時はこの名を使っている。
ひとしきり説教をした葵咲は少し落ち着いた様子。二人はやっと解放してもらい、その場に立たせてもらえた。反省しているのか していないのか、一郎兵衛はいつもと変わらぬ笑顔で葵咲の肩をポンポンと叩く。
一郎「まーとりあえず八時間経ちゃ元に戻るんだし。葵咲も今日は仕事休みなんだろ?折角の入れ替え生活楽しんでみたらどうだ?」
葵咲「“葵咲も”って何だよ。」
ここで聞き捨てなら無いワードが。自分も休みだと決め付けられている発言に、銀時は苛立ちを見せた。だがそんな銀時に対して一郎兵衛は悪びれるのではなく、眉根を寄せて口を尖らせる。
一郎「どうせオメーは万年休みだろ。」
葵咲「失礼な事言ってんじゃねーよ!仕事ある日だってあらァ!」
銀時「普通は仕事ない日の方が少ないはずなんだけどね。」
“ある日だってある”という言い草は、ある日の方が少ないという意。その事にすかさずツッコミを入れてしまう葵咲だった。
そんな葵咲のツッコミを流し、銀時はぐっと伸びをしながら一郎兵衛に視線を合わせる。一郎兵衛もコクリと頷き、目で合図を送った。
葵咲「じゃあ俺は、とりあえず屯所戻ってゆっくりすっかな。」
わざとらしくないように自然な発言を心掛け、屯所へ帰ろうとする銀時。その目的は…