第82章 マウスの実験はあてにならない。
そう語る一郎兵衛の瞳は真剣そのもの。嘘を吐いているようには見えなかった。銀時は真剣な瞳を一郎兵衛へと向けて頷く。
だが次の瞬間、一郎兵衛から信じ難い一言が飛び出した。
一郎「マウスでだけど。」
葵咲「マウスかよォォォォォ!んなもん元に戻るも何も入れ替わった事すら分かんねーじゃねぇか!!」
一瞬で期待を裏切られた。再び絶望のどん底へと叩き落される銀時。それに対して一郎兵衛はなおも真剣な表情で訴える。
一郎「いや、確かにミッキーとアルジャーノンは入れ替わって戻った!」
葵咲「んなトコまでスケット●ンスの真似しなくて良いんだよ!!」
スケット団の顧問、中馬先生の実験そのものである。そんな一連の流れを経て、一郎兵衛は落ち着いた表情に戻し、銀時と肩を組んだ。
そして組んでいない方の手を口元に沿え、銀時の耳元へと口を近付けて再び小声で語り掛ける。
一郎「まぁ落ち着けって。入れ替わってる今、万事屋さんに依頼があるんだよ。」
葵咲「依頼だァ?」
こんな時に何を言い出すんだコイツは。銀時はそう言わんばかりに苛立ちを表に出す。そんな銀時には構わずに一郎兵衛は続けた。
一郎「葵咲になりきって、アイツに好意寄せてる奴らをフってくれ。」
葵咲「は!?」
銀時が目を点にするのも無理は無い。一郎兵衛が何を言っているのか理解するまでに少し時間を有した。銀時が目をパチパチさせていると、一郎兵衛は銀時と肩を組んでいた手を離し、自ら腕組みをする。
一郎「俺さぁ、今回はマジで本気なんだよ。けど葵咲の周りってあいつに惚れてる奴が多いだろ?ちょっとでもライバルを削りてぇ。」
葵咲「お前結構えげつねぇのな。」
一郎「俺は目的の為なら手段は選ばねぇ。」