第82章 マウスの実験はあてにならない。
そしてここで、これまで唖然としていた葵咲が我に返って二人の間に割って入る。
銀時「困るよ!今日中に戻らないと!!明日からの仕事ヤバイじゃん!銀ちゃんなんかに私の難しい仕事は絶対無理だしィィィィィ!!」
葵咲「お前はちょくちょく俺を見下すよなァ!?」
その発言で現実に引き戻された銀時は、再び冷静さを取り戻した。葵咲の退院時(雪月花三十五訓~参照)といい、今回といい、たまに見下される事が何とも腹立たしい。
銀時が葵咲を睨んでいると、一郎兵衛はそれを無視し、腰に手を当てて頷きながら二人に笑顔を向けた。
一郎「心配すんなって。所詮まがいもんだから。」
葵咲「自らまがいもんとか言うんじゃねェェェ!嘘でも本物と言ってくれェェェェェ!逆に不安になるゥゥゥゥゥ!!」
再び頭を抱える銀時に、一郎兵衛は首を横に振って説明を補足する。
一郎「そういう意味じゃねーよ。また薬飲まなくても放っときゃ時間切れで勝手に戻るって事だ。」
銀時「それ本当!?」
一縷の希望が見えた。葵咲は目を輝かせて両手を合わせる。葵咲の(見掛けは銀時の)笑顔を見て一郎兵衛はまた得意気な顔になり、満面の笑みを浮かべる。
一郎「ああ。コレくれたオッサンが言ってたからな!」
葵咲「不安しか残らねーんだけど!信憑性ゼロなんだけどォ!?」
胡散臭さMAXである。全く持って信頼性がない。銀時と葵咲が再び頭を抱えていると、一郎兵衛が銀時の腕をぐいっと引いて葵咲から引き離した。
一郎「それより銀、ちょっとこっち来い。」
葵咲「ちょ、なんだよ!」
葵咲は元に戻れるかどうかの不安に支配されており、銀時と一郎兵衛が離れた事に気付いていない。その事を一郎兵衛は目で確認してから、念の為に小声で銀時に話し掛ける。
一郎「心配すんな。飲んでから八時間後、ホントにちゃんと元に戻れっから。実験済みよ。」
葵咲「!」